リンク・イット・オール



濁すような言い方をされ、普段の私ならきっとこれ以上踏み込まないだろう。

だけど不意に見せた悲しげな瞳に、ここで引き下がってはいけないと、どうしてか強く思った。



「なにか、あったんですか……?」



勇気を出してたずねると、真紘先輩は地面を見たまま黙る。

そして少しの沈黙のあと、その口は開かれた。



「……俺の喉、病気だった」

「え……?」



病、気……?



静かな空気にぽつりと響いたひと言。

予想もしなかったその言葉に、息が止まりそうになった。



「喉頭乳頭腫ってやつで、俗にいうポリープみたいなのが喉にできてるんだって。そのせいで、歌おうとしても高音になると声が出ない」



ポリープ、声が、出ない……。

掠れた声で彼が言うそのひと言ひと言が、うまく頭に入ってこない。



そんな、声が出ないだなんて。

でも一生のものではないよね?

今だけで、少ししたら落ち着いて元どおりになっていくよね?



「でも、それ治療とか手術とか対処法はあるんですよね?」

「うん。一時的にはそれでよくなる」



私の言葉に真紘先輩は頷くけれど、「けど」と言葉を続ける。



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