リンク・イット・オール
「ライブも自分たちでブッキングしに行くし、費用もチケット捌けなかったら自費だしな」
「大変ですね……」
「でもそうしてでも、普段から音楽をやる場所がほしいって思ったから」
お金がかかっても、それでも音楽をやるために。
そこまでの情熱を注げるものがあるということが、純粋に羨ましいと思った。
……私には、ないや。
そもそもやりたいこともなかったから、これまで部活も入らなかったわけだ。
まだ進路も考えていないし、これという趣味や特技もない。
そんな自分からすると、彼らはキラキラと輝いているように見えた。
「メンバーは、この赤い頭のが笹沼、おとなしいのが高田でタンクトップが関、そして俺。中学からの仲で全員2年」
真紘先輩が指差す順に、顔と名前を照らし合わせる。
「そもそも、軽音楽部のマネージャーってどういうことをするんですか?」
「部室掃除とか、ライブがあればセッティングの手伝いとか撮影。あと動画共有サイトに動画をあげたり、まぁいろいろ」
つまり、ほぼ雑用係ということ。
……まぁ確かに、この散らかった部室を見ると、掃除係のひとりはいたほうがいいのかもしれない。
食べかけのお菓子や、持ち込まれた毛布を見てしみじみ思う。