敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「えっと、なんか、責任感とか、その、褒めてもらえると思ってなかったので嬉しいです。ありがとうございます」
「言葉にして中々お伝えできていないかもしれませんが、常々そう思っていますよ。あなた方が優秀だから私のような者でも室長という立場でいられるのです」
室長のことを勝手に自信満々な超絶イケメンだと思っていたのに、まさかの謙遜とか予想外すぎてこっちが慌てる。
「あの、それは逆ですよ。私はここに配属されてから日が浅いですけど、前の室長よりも仕事がしやすいというか、動きやすいです。それに自分の意見も遠慮せずに言えるようになりました」
「はは、それは私に貫禄がないから、ということでしょうか」
室長が『はは』と笑い声らしきものを出したにも関わらず顔は全く笑っていないことはもう気にするまい。
「いえ、意見が言いやすい空気というのか……、そうです、何を言っても顔色が変わらないので言いやすいのか……も……」
「……顔色が、変わらない……?」
「はっ!そ、その……」
しまった、と後悔しても口にした言葉は戻らない。
顔色が変わらない、というのはこの場合は公平な目で見てくれるという褒め言葉のつもりだけれど、圧倒的に悪口寄りの印象を与えてしまうだろう。
口が滑ってしまった理由は謎だけど、たぶん初めて室長とこんな風に面と向かって雑談をしたものだから、私はどこかテンションが高めになっているに違いない。