敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

「……久しぶりだな」

「え?」

「風邪うつってないか気にしてたけど、あれだけうつそうとしたのに本当にうつってないんだな」

「あ……、ま、まあ、おかげさまで……元気です」

「ふ……、何だそれ。おかげさまって言わないだろ」

「そ、そうですね、おかしいですよね。何言ってるんでしょうね」


室長とこうして二人きりで話すのは久しぶりで変にドキドキする。
それにあの時「絶対うつるなよ」と言われて交わした激しいキスが思い出されたことも相俟って、私の心臓は気の毒なぐらい跳ねている。


「あの、佐伯さん早退されたんですか?」

「ああ。たぶん」

「たぶん……?」


たぶん、なんていう曖昧な言い方が腑に落ちない。
まるで早退したのかしてないのか分からないというように聞こえる。


「他の皆にはしばらく休むと伝えるつもりだ。まあ、理由は体調不良、かな……」

「顔色が悪かったですよね。大丈夫ですかね……」

「どうかな……。……はあ、忙しくなりそうだな……」

「そうですね……。でも頑張りますよ」


私がこう言うと室長はふっと優しく笑って私を見つめる。
見つめたまま、ずっと黙っているので私はそわそわと落ち着きがなくなってきて。
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