敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
多分、私の話は室長が予想していたものとはかけ離れているのだと思う。
でも私は室長がこういう反応をするんじゃないかと思っていたので、眉間にしわを寄せて難しい顔をされてもそれほど傷付いてはいない。
それでも胸の内は嫌な緊張感でいっぱいだ。
張りつめた糸が今にも切れてしまいそう。
でもここで私の想いを全部伝えなければ後がない。
そんな切羽詰まった状況に、震えそうになりながらも私は話を続けた。
「でもそれって仕方のないことだと思うんです。だって私は経験も多くないし、室長を満足させられなくて当然かなと。だから私に室長が満足する方法を教えてほしいんです」
「……何言って……」
「それと、これ、お返しします」
そう言って私がバッグの中から封筒を取り出すと、室長はそれが何なのかがわかったらしく、ふっと口の端を上げて笑った。
「まだ持ってたのか。てっきり捨てたと思ってたけど」
「……捨てませんよ。でも、もう要らないのでお返しします」
「返さなくていいよ。要らないなら捨てるといい」
全く興味がないとでも言うようにそう告げる室長を見て、胸が軋むような痛みを感じる。
婚姻届を保険だと言って受け取らせたのは室長なのに。
他の人はもう探さなくていいと言ったのに。