敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~


「君は、慎太郎くんと結婚するのが正しい。もし家柄とかそういうことを気にして断ると言ってるなら……」

「そんな理由じゃありませんよっ……!」


もし今目の前に机があったら目いっぱい叩いて立ち上がってるところだ。
でも机はないし、怒りの捌け口がないので手にしていた封筒をビリッと破り捨てた。

すると、なぜだか妙にすっきりとした気分になったのは気のせいじゃないと思う。

心のどこかで、自分でも気づかないうちにこの『保険証書』を頼りにしていたのかも。

だけど私がほしいのはこんな紙切れなんかじゃない。

ほしいのは、室長の本当の気持ちだ。


「私は、室長が好きなんです。だから他の人と結婚なんてしません!」


自分でも驚くほどに威勢がよすぎて、言いたかったことを吐き出す度に、心が軽くなっていく。


「さんざん優しくして、可愛いとか君がいいとか言ってたくせに、あれは全部嘘なんですか?」


私が勢いに任せて話してる間、室長は目を見開いて驚きを隠そうともしていなかった。

もしかしたら引いてるのかもしれないけど、ここで私が抑えたら絶対室長を捕まえられない。
それはなんとなくわかってる。

室長はこれまでずっと人と深く関わることを避けていたんだから、私が追いかけないと追い付かない。

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