敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

不審に思われない程度に室長の執務室の様子を探るもいるような、いないような、結局わからずじまい。

そりゃ中が見えないんだからわかるはずないよね、なんて心の中で乾いた笑いをしていると。


「おはようございます」


凛と響き渡る、低音で、どこか色気まで感じさせるバリトンボイス。
耳にした途端にドキッ、と胸が大袈裟に跳ねたのは室長の別の顔を知ったせいなんだろうか。


「お、おはようございます……」


目を合わせないように振り向き、挨拶をしてからおそるおそる顔を上げると。


「っ!」


いつものごとくの無表情、なはずなんだけど、どこか上から目線の、冷めた目で私を見つめる室長と視線がぶつかってしまった。

目が合っても特に話し掛けるでもなく、室長は一瞥しただけで自分の執務室へと入っていった。

何を言われるか、言われないのか、もしくは急な異動とか。
何かあるはず、と思って週末を悩み抜いてきたのに何も無さすぎて逆に拍子抜けしてしまった。

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