敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「藤堂くん、さっきの話だけどーー」
返事を待たずにドアを開いて入ってきたのは社長だった。
で、押し倒されたままの私とは逆さまの状態で目が合ってしまい、3人の間にしばしの沈黙が流れて。
「あー……、いいや。また後で」
私達に言ったのか独り言なのか、社長は呟くようにそう言って出ていってしまった。
「……そういえば暁斗は俺の返事待ったことないな……」
私に覆い被さったまま、感慨深げにドアの方を見つめてそう呟く室長。
それを見て、今のうち、とばかりに私は室長の腕の中から抜け出して。
「どうするんですか……。社長に見られましたよ……?」
乱れた髪や服を直し、室長から距離を取りながら私がこう言うと室長は「大丈夫だ」と言って何も動揺していないようだった。
室長は兄弟だからいいかもしれないけど私はどう思われたのか。
社長から貞操観念のゆるい女とか、そういう理由で異動させられたりしないかなとちょっと心配だけど、室長が大丈夫というなら大丈夫なんだろう。
「じゃあ私、もう行きます。あ、それと今週合コンに誘われてます。断ることも出来ると思いますけど……」
「合コンね。君は早速俺よりいい男を探すって訳か。俺は欲求不満のままなのに」
「そ、それは」
「はは、いいよ。冗談だ、行っておいで。見つかるといいな。俺よりいい男」
言葉ではそう言ってるのに、そんな奴見つかる訳ないとでも言いたげに見え、それには絶対の自信を持っているかのようだ。
そして室長は乱れた机の上を片し始めたので、私はそのまま執務室を後にする。
本当は熱いキスに溶かされて足がガクガクしていて歩くのがやっと、というのは気付かれてませんように、と祈りながら。