敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
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阿川さんが言っていた通り、午後に入ってすぐに新たに秘書室配属となった新人さんの紹介があった。
「本日より秘書室勤務となりました佐伯美緒です。分からないことばかりで不安な面はありますがーーーー」
コネか何かで入ってくる、つまりは誰かの愛人?そう思ってたのに新人さんはパッと見た感じ普通の子だった。
気が強そうな訳でも弱そうな訳でもなく、特別美人という訳でもない。
ただ、彼女はピンと背筋を伸ばした姿勢が美しく、立ち姿にどことなく品位を感じると率直に思った。
昔から姿勢が悪いと母から注意されていた私とは大違いだ。
ふと隣にいる阿川さんを見れば、室長をじっと見つめて一通りの紹介が終わるのを待っている様子で。
今ごろ配属された理由を聞くとか言っていたのでその機会を伺っているのだろうと思ったその時。
「何かありますか、阿川さん」
「はい。役員数に対して秘書の人数が少なくーーーー」
室長に質問を浴びせる阿川さんは強気な態度を崩さず、淡々と話し続ける。
対する室長はいつもの通りの何を考えてるのか分からないポーカーフェイスで、阿川さんが鉄仮面と呼ぶのが良くわかるような気がした。