敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「とにかく佐伯さんは帰らせる。こんな状態で放ってはおけない。ね、君もそう思うでしょ、神田さん」
「えっ!」
いきなり名指しで聞かれたのでギクッとしたけれど、佐伯さんや剣崎さんがいるところからは見えなくても、通りの方からやって来た社長には私の姿なんて丸見えだったはず。
名前を呼ばれてしまっては隠れている意味もないので、おずおずと壁代わりの樹の脇から出て行く。
すると見るのも眩いほどの笑顔を向ける社長と、「何でいるの?」とでも言いたげな怪訝な表情を浮かべた剣崎さんが私の方へ目を向ける。
「あ、あの、私、佐伯さんの様子が気になって、それで……」
社長が一体どこまで、何を知っているのかはわからないけれど、佐伯さんのことが心配だったことは事実だ。
「やだな神田さん、そこにいるなら来てくれたらよかったのに」
顔は笑っているけれど、どこか咎めるような口調の剣崎さんにたじろいで返事に迷う。
「えっと、その……」
「神田さんが出て行こうとしたら俺が来ちゃった、って感じだよね?それで俺達が話し始めたからますます出づらくなった、みたいな」
「は、はい、そうです……」
困り果てた私に社長の絶妙なフォローが入り、心の中でさすが社長、と感謝する。
そんな気持ちを込めて私がチラッと社長へ視線を移すと、ニコッと笑って小さく頷いてくれた。
室長といい、社長といい、ここの兄弟は容姿が麗しいだけじゃなく人間的にも魅力に溢れていて、知れば知るほど惹かれざるを得ない人達なんだろうと思った。