敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~

「……じゃ、佐伯さんは三原に任せて俺らは戻ろっか」

「え……、あ、はい……」


佐伯さんをしっかりと抱き締めたままの社長を一瞥すると、剣崎さんはにっこりと微笑んで私にそう言った。

俺ら、と言われて『ら』って私が入るの?と一瞬思ったけれど、そういえば今は合コンの最中だったと思い出す。

室長から佐伯さんを見守ってと頼まれたけど、今は社長が彼女を助けに来ていて。

まさかと思うけど社長からも守ってね、ってことじゃないよね……、と先にお店の中へと消えていった剣崎さんを見送りながら考えていると。


「ごめんね神田さん。合コン楽しめなかったでしょ」

「い、いえ、そんなことは……。それに元々楽しめそうになかったですし。それより佐伯さんは……」

「ああ、大丈夫。眠たいだけ……なのかな?」


そう言って社長は腕の中にいる佐伯さんに訊くけれど反応がない。
何とか立っているけれど、どうやら完全に社長に身を預けてしまっているようで。


「寝ちゃってるんですか?」

「はは、そうらしいね。お酒はあんまり強くないのかな」

「あ、飲む機会がなかった、って言ってたから慣れてはいないのかと……」

「そっか。まあ飲んで暴れるよりずっといいか」

「ふふっ、そうですね……。それでこの後なんですけど……」

「ああ、俺が美緒を連れて帰るよ」

「そうですか……」


社長がごく自然に佐伯さんのことを『美緒』と言った。

ああ、そうだ。
私があの時聞いてしまった話に出ていたのは『美緒』という名前だったはず。
佐伯さんの名前が美緒であることに今気が付いた。

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