敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「……俺は、誰かに特別な感情を持ったことはない。言っただろう?愛情を知らないって。そうしたら君は歩み寄るって言ったんだ」
「あ……」
「楽しいよ。君といると。いろんな顔をするから羨ましい。俺もそうなれるんじゃないかと錯覚する。君のことは気になるし、嫌われるのも傷付けるのも嫌だと思う。それに君をもっと知りたいとも思ってるよ」
私を真っ直ぐな目で見つめる室長に後ろめたさは感じられない。
これが今の室長の正直な気持ちなんだろう。
「君が不安に思う気持ちも分からないでもない。ただ俺は歪な環境にいたせいか、女性に対して特別な感情を抱けないんだ」
そう言って室長は自嘲気味に笑う。
なぜか室長を追い詰めているような、そんな気分。
持ち合わせていない感情を言葉にしろと詰めよっているみたいだ。
「……ごめんなさい。もう、十分です。変なこと訊いてしまってすみません」
「いや、俺の方こそ筋の通らないことを言ってると思う。ただ、俺には君が初めて『恋人』として呼べる唯一の存在なんだよ」
「……そうなんですか?」
「ああ。俺は今まで誰かと付き合った経験がないんだ」
「え?でも色んな人と……」
最初にこのバーで室長に会った時は知らない女性とキスを交わすという衝撃の場面に出くわしていた。
あんな風に軽く出会って、付き合ってきたと思っていたけど。