敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
「君を選んだ理由は、君がどういう人間かを仕事を通して見てきて知っていること、そして可愛いこと、だ。秘密を知られたことは理由じゃなくきっかけに過ぎない」
「じゃあ私があの日立ち聞きしていなかったら、こんな風にはなってなかったってことですよね」
「そうだろうね。そもそも黙っていてくれるなら、っていう『保険』の話が出なかっただろうし」
あの時は自分の行動を悔やんだけれど、結果が今のこの状況なら悪くないどころか、よかったとさえ思えて。
「……立ち聞きしてよかった……」
「ふ……。本当はよくないことだろ?」
「あっ、そ、そうなんですけど」
「まあ、よかったのかな。お互いに」
そう言って室長は優しい目をして微笑む。
それを見て私はやっと素直に笑い返せる、そんな安堵の気持ちでいっぱいで。
「あの……七海さん」
「えっ、あ、棗くん……」
どこか清々しい気分で室長と見つめあっていると、カウンターの中から棗くんに話し掛けられた。
「なんかお取り込み中だったから聞けなかったんだけど……。お飲み物は何にしますか?」
「あ!そ、そうだよね、私何にも頼んでなかった!えっと、どうしようかな……」
「お任せでもいいなら作るけど」
「あっ、じゃあそうします!甘めな感じでお願いします」
「りょーかーい」
棗くんは可愛い返事をすると、鼻歌をうたいながらシェイカーを手にして私のカクテルを作り始める。
前に来た時に紹介されて少し話しただけなのに、二人ともすごく人懐っこくて可愛いくて、社長のいとこというのはわかるけど、室長のいとことなると全然似てないなあ、と思う。