冷酷御曹司様と政略結婚したら溺愛過剰でピンチです
第一章 家族を支えるための政略結婚

昨夜の大雨のせいで、我が家の広い日本庭園の一角には匂い立つ白梅の花がひらひらと溢れている。

水に濡れて石畳に貼りつく白い花弁をせっせと竹箒で掃いて片隅に集めながら、私――橘 小春(たちばな こはる)は箒の柄を握るかじかんだ指先を擦った。

「ふう、こんな感じかな。暖かいうちに窓磨きを終わらせて、夕飯の準備をしないと」

春一番が吹き鶯が鳴き始めたと言えども、暦の上では二月下旬。
昨日の大雨なんてなかったように空が澄み、太陽がいくら燦々と照りつけていようと、外での水仕事は凍るような冷たさがある。




この辺一帯の地主であった祖父母の残した大きな庭付き日本家屋に引っ越し、六千平米を超える広大な敷地に建つ築五十年のエレベーター無し民間マンション群を私の父が相続することになって、約二年。

遺産相続の際に莫大な相続税を支払った我が家には、今後の固定資産税を支払うには少ないお金と、老朽化したマンションの取り壊しという急務が残った。
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