God bless you!~第13話「藤谷さん、と」
〝TiC TAC〟
〝TiC TAC〟
チクタク。
バカ高い時計を売っている店は、そういう名前の店だった。
(また小文字が……それはいいとして。)
折山があんなに喋るとは意外。
スタバでもさっきの店でも、かなり口数が少なかった。
驚いた事に、右川にちゃんと説教できている。それも超・正論だ。さすがの右川も頭を垂れるしかないだろう。
だが右川は……折山に比べたら相当強い。女子に対してだから、キツイとまではいかないが、言い方はどう見てもかなり強いと思う。
だが、藤谷と同じくらい強い言葉を吐く右川を目の当たりにしても、恐れる事無く、折山は自分の言いたい事を普通に言えている気がした。
2人の間で、同等な友達関係が続いている理由だと思えた。
吹き抜けから、藤谷3人組の様子を窺うと、キワドい洋服を持ち上げてゲラゲラ笑っている。店は離れているし、この様子なら妙な事は無いだろう。
俺はそっと、その場を離れた。胸を撫で下ろす。右川からのプレゼントは、折山直伝の、何とかケーキが出来上がるのを口を空けて待つとしよう。
2人は、元の階に戻ろうとエスカレーターを上った。
俺もそれに続く。2人はまた別の店を覗いた。
剣持が元のベンチから消えていたので、ラインで呼び出して落ち合った。
ベンチに腰掛けた途端、剣持は「どうだった?」と早速聞いてくる。
「平気だよ」と答えた。
「右川と2人で、クリスマスの話をしてた」
剣持は、「俺、何をやればいいかな」と店内癒しの音楽にも負けそうな、殆ど聞き取れない声で呟く。
あまり見掛けないと思う。男子が男子の顔を覗き込む場面。
「今もさ、ちょっと色々見てきたんだけど。よく分かんねーな」
折山みたいな女子が何が欲しいのか、正直、俺にも全然わからない。
剣持ならどんな物でも手に入れる事ができるだろう。しかし、さっきの話の感じだと、高価な物は逆効果とは言わないが、何だか違和感があると思った。
「本人に聞いてみたら」
としか言えない。
「カッコ悪くねぇか、それ」
「おまえなら何言っても大丈夫だよ」
何を要求されても手に入れる事が出来る。その自信に裏付けがあるからこそ、訊ける事だ。
剣持は腕組みをした。その姿を横目で見ながら、
「おまえさ、よく、ああいう子を見つけたよな」
交わる事の無いグループ。その性格も性質も、まるで違う相手。
もし右川より先に出会い、剣持より先に沢山話す間柄になっていたら、折山と付き合うのは自分だった可能性もあったりしないだろうか……とか。
ちょっと妄想に耽る。
「おまえこそ。右川みたいな珍獣、よく発見したな」
「違うだろ。俺の方が見つけられちまったんだよ」
剣持はまるでこっちの台詞を疑うように、カッと目を見開いた。
「こういう時だよな。おまえの本性って……」
「って、そこで止まるなよ。気になるだろ」
「いや、だから」と剣持は、もごもごした。
「いいよ。言えよ。怒らないから、ちゃんと聞こえるように言ってくれ」
「自意識過剰!」
その時だった。

ブス!
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