俺がきみの一番になる。

顔を見合わせて笑ったあと、またすぐに沈黙が訪れた。だけどなんとなく空気は和んでいて、さっきまでの気まずさはない。

「昨日は言いすぎちゃって……ほんとに、ごめんね。今までずっと心配してくれてたのに、突き放すようなことばっかりしてたよね。亜子はもう大丈夫だから、心配しないで」

「俺のほうこそ、ごめん」

「ううん、謝らないで。本田君は悪くないよ。亜子の心に余裕がなかったんだよ」

「柳内さんって、なんでも一人で抱えこみすぎなんじゃねーの? もっと人に頼ってもいいと思う。特に俺とか」

本田君は冗談っぽい口調でそんなふうに言ってくれた。傷つけちゃったはずなのに、そんなことを微塵も私に感じさせない。それどころか、本田君にも謝らせてしまって申し訳ない。

「亜子、人に頼るのってなんとなく苦手で……どうすればいいか、わからないんだよね」

四人姉妹の末っ子としてかわいがられて育ったけど、自分のことは自分でやらされてきたし、うちの親はしつけに厳しいほうだった。

だからいまいち、人への頼り方ってわからないんだ。

「モヤモヤしたり、嫌なことがあった時には俺に話してくれれば、それだけで気持ちが楽になることだってあると思う。大層に考えなくても、なんでもいいんだよ。テストが0点だったとか、昨日親に怒られたとか」

「あは、なにそれ」

「俺は柳内さんのそういう何気ない話を聞きたい。なんでもいいから話してもらえるだけで、頼られてるって感じがするんだよ」

そういうもんなの?

本田君ってやっぱりちょっと不思議な人だ。

でも嫌いじゃない。

ううん……むしろ。


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