俺がきみの一番になる。
エレベーターの中で胸に手を当てる。落ち着け、落ち着け。心で唱えながら言い聞かせる。大きく深呼吸もしてみた。
だけど、心臓のリズムは変わらない。なんでこんなに意識しちゃっているんだろう。結愛ちゃんがへんなことを言うからだよ、うん、絶対にそうだ。
本田君はエントランスの柱にもたれかかりながら立っていた。背が高くて体格がいいから、とても目立つ。
「お待たせ」
駆け寄りながら言うと、本田君がゆっくりと顔を上げた。本田君の私服はひとことで言うと、とてもシンプル。ゆるめのジーンズにTシャツ姿だった。
「わざわざ来てもらっちゃって、ごめんね」
「…………」
あ、あれ?
目は合ってるのに、返事がない。
本田君はなぜかポカンと口を開けて私を見て、固まっている。
「おーい、本田君?」
どうしたの?
そんな本田君の目の前で手を振ると、本田君はハッとして瞬きを数回繰り返した。
「わ、わり。柳内さんが、あまりにもかわいい格好してるから。制服の時とずいぶん雰囲気がちがうなって」
「か、かわいい?」
今度は私が目を見開く。
そんなにストレートにはっきり言われるなんて思ってなかった。
みるみるうちに赤くなっていくのが、自分でもよくわかった。
ダメだ、本田君といると調子が狂う。