俺がきみの一番になる。
本田君は英語だけじゃなく、オールマイティに授業をこなした。
休み時間になると男子たちに囲まれてバカなことをやったり、みんなで騒いだり、なにかといつも輪の中心にいる。
「キャー、カッコいいー!」
体育の授業でも、本田君は目立っていた。野球部なのにバスケもすごく上手で。
女子の目がコートの中で人一倍動き回る本田君に集まる。
まっすぐにゴールを見つめて、ボールを持った腕を上げる彼。
ジャンプしながらシュートを放つと、ボールはまっすぐにゴールに吸い寄せられていった。
サラサラと揺れる黒髪。汗を腕で拭う仕草。
「やばくない?」
「やばいよね。カッコよすぎるでしょ」
どうやら本田君のことをカッコいいと思っている女子は多いらしい。
そして、それをわかっているのかいないのか、本田君は無邪気に笑っている。
「草太、亜子ちゃんが見てるぞ」
「え?」
コートの中にいた本田君が突然こっちを見た。
私は恥ずかしくてパッと目をそらす。
「よかったな、いいとこ見せられて」
「そ、そんなんじゃねーよ」
そんなやり取りを離れた場所で聞きながら、うつむく。
すると、どこかから視線を感じた。
それは男子からのほうではなく、女子の集団から。
ふと顔を上げると、沢井さんと目が合ってしまった。
なんだか睨まれているような気がする。
とっさに背を向けて、沢井さんから逃げた。