ボクは初恋をまだ、知らない。
何事も、きっかけは些細な事が多いと思う。
友情が芽生えるきっかけ、
誰かが誰かに恋をするきっかけ。

風見とは小中高とずっと同じだった為、
彼の事は大体何でも知っている。

中学に上がってしばらくした頃、
風見に初めての彼女が出来た。

可愛くてしょうがなかったらしいが、
ある日陰でボクの悪口を話してたのを聞いてしまったらしく、呆気なく付き合いは終わった。

「ねぇ、ほんとに別れて良かったのか?
ボクは何言われても大丈夫だよ…っ?」

「良い訳ねーだろ?俺は嫌だ!
親友の悪口言う彼女なんかいらねーよ。」

学校の帰り道、先々行く彼の足取りを追いかけてボクは尋ねたが、
真っ直ぐで単純で素直な風見らしい答えが返ってきた。

「……そっか、ごめんね。ボクがこんなだから
風見には、たまに迷惑かけちゃうね。」

体も心も悩みを抱えやすい思春期ほど
少しネガティブになりやすい。
そんなマイナスな事を苦し紛れに言うと、
まさかのデコピンをくらった。

「いてっ!なにすんだよー。」

「ばーか!!なんで千影が謝るんだよ!
"ボクはボク"って貫いてる所がお前の良いところなんだから、堂々としてていいんだよ!」


160センチのボクより、いつの間にか随分と
目線が高くなった風見。

成長期で、最近どんどん体格もしっかりしてきて、
益々男らしくなってきた1番身近な存在の男の子。

それなのに、お互いに異性だと意識したり、
恋愛感情ってモノは一切感じない。

男同士の友情、みたいなものに近かったと思う。

それがボクにとっては、居心地が良いのだけど。

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