ボクは初恋をまだ、知らない。
「え……ツッキー?」

皆がワイワイ騒ぐ中で、

ボクだけのペンを滑らす音が
シュルシュルとスケッチブックに描かれていく。

1番後ろの席だし、

皆の騒がしい声で聞こえないはずのペンの音が

だんだんと自分の耳にしっかり聞こえるようになった時。

「……ん?え?
何で皆ボクを見てるの?」

さっきまで太陽先生に向けられていた皆の視線が、

いつの間にかボクに注がれている。

「月村。」

そしていつの間にか、
太陽先生がボクの隣に立っていた。

怒るでもなく、笑うでもなく、

ただボクのアイデアの走り描きをじーっと
見つめている。

「……おまえ、後で職員室に来い。」

「え。」

怒ってらっしゃる!!??

勝手な事して怒ってるのだと思った。

ボクは青ざめてただ、「はい。」とだけ返事した。


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