ボクは初恋をまだ、知らない。
「ボクは、ちゃんと自分が女だって理解してる上で振舞ってるよ。
生理が来たのはビックリしたけど。
"男になりたいから、スカートが嫌い"って訳でも無いんだ…。」

「そう、なんだ。ぢゃあ単に、
普通の可愛い下着よりもボクサーの方が格好良くて好き…みたいな感じ?」

「そうだね。」

薫とそんな会話をしていると、
なんだかまた、嬉しくもない、悲しくもない
"真ん中の気持ち"みたいな感情に襲われた…。

正直、ボクはその感情の正体が、
未だに分からないでいる。

「…薫は、ボーダーラインって知ってる?」

「え?何それ?」

「障害かどうか判断するには、
診断がまず必要だろ?…受けた事あるんだ。
性同一性障害の。」

「うんうん。」

「でも、違った。
そもそもボクのこの見た目は生まれつきだし。
意識して男っぽくしてるわけぢゃないしね。」

ベッドとゆう、リラックスできる場に居たからか
母さん位にしか話せなかった事がポロポロと口から零れていく。

「そうなんだね、それでそれで?」

薫を見ると、何故か嬉しそうな顔をしていた。

「……ボーダーラインってゆうのはつまり、
障害を持ってそうだけど持ってない立ち位置ってゆうのかな?…まだ、知識浅いからこんな表現しか出来ないけど。」

「白黒つかない感じ?」

「そうゆうこと。
この世にはね、沢山いるんだって。
みんな気づかない内にどんどん成長して、
大人になってから分かる発達障害もあったり。」

「へー!色々調べたんだね。」

「…まぁ、今後何かの役にも立つかなって。
ってゆうか…なんでそんなに嬉しそうなの?
ボク今結構、しみったれた話してる気がするのに」

ニコニコしていた薫は、
長い髪を耳にかけながら言った。

「だって、千影が心開いてきてくれたって
思ったからさ!嬉しくって。」

屈託のない笑顔は、いつかの風見と被った…。

ボクは多分、こうゆう表情ができる
人間が好きなんだなと思う。

「…ぅうっ!?いへへ…」

突然、薫に頬を両方引っ張られた。

「へっへっへ!あたしは、千影の中性的な
顔好きだよ!鼻筋は整ってるし目は二重で
キリッとしてるし!」

「め、面食いなのか…?」

「でも顔だけぢゃなくて、キャラも好き。
淡々と喋る所も、女女してない所もね。」

「薫、サバサバしてるもんね。」

つねった後にはボクの頬の柔らかさに気づいたのか、ずっとふにふにと触っている。

なんだか、女の子に告白された気分になって、
2人して顔を見合わせて笑った。

「薫、ありがとう。もう大丈夫だから、
教室に戻ろうか。」

「うん!からかってきた男子は後で
ぶっ飛ばしとくから!」

「それはだめ!…ははっ!」

ボクはこの日をきっかけに、
薫と更に仲良くなった。

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