ボクは初恋をまだ、知らない。
授業中の教室に戻ると、
さっきのからかってきた男子達がニヤニヤしていたが、薫が椅子を蹴って威嚇していた。

内心、少し焦ったけど、
授業後にからかうものは居なく、
そのまま昼休みを迎える事が出来た。

「あの、花岡くん。」

「月村。体調大丈夫?」

お弁当を食べている花岡くんに話しかけると、
体調を気遣ってくれた。
優男だ。何となく女子に人気のある理由が分かる。

「ジャージ汚れちゃったから、
洗って返すね。ごめんなさい。」

ほぼ、話すのも初めてだったから、
丁寧にお辞儀をつけてみる。

「うん、気にしなくていいよ!
俺、ダンスやってるからジャージいっぱい
持ってるし!」

爽やかな笑顔が眩しすぎた。
こんな時に女子は胸キュンとかするのだろう。

「ありがとう!クリーニング出来たら渡すね!」

眩しすぎて、ボクはさっさと自分の席に着いた。

「月村って意外とふつうに喋るのな。」

「確かに。根暗のイメージしかなかったわ。」

花岡くんと一緒にお弁当を食べていた男子が
そう話すのが聞こえた。

(…そりゃ口数は少ないけど。)

ちょっとその言葉にムッとする自分がいた。

「そう?とゆうか、礼儀正しい子ぢゃん。」

花岡くんのフォローは、素直に嬉しいと思った。


ーーーーーーー

翌週月曜日。登校早々ボクは花岡くんに
ジャージを渡した。

「こないだのジャージ。ありがとう!」

「お、どういたしまして!」

前回のように、さっさと席に着こうと思ったが、
花岡くんに呼び止められた。

「月村さ、最近薫と仲良いだろ?」

「え?うん。…花岡くんも仲良いんだよね?
薫、翔って名前で呼んでたし。」

薫と花岡くんは幼なじみだって誰かが
言ってた気もする。

「今日放課後にさ、久しぶりに河原で
ダンスやろうって話してたんだけど。
月村も良かったらおいでよ。」

「……え?!」

まさかのお誘いに、ボクはマックス速度で
瞬きをした。

「運動は好きだろ?」

「うん。……あっ!風見も連れてっていいかな?
あいつもダンス好きだから。」

「ん?風見…って、隣のクラスの?」

「そう。風見啓介。」

あれ?まさかの知り合い?
やけに花岡くんが風見の名前に反応した。

「あいつね!やっぱり!
今同じダンススクール通ってるよ!」

「えぇっ!?そうだったの!?」

薫と繋がったボク。
花岡くんと繋がった風見。

これがボク達の青春に繋がっていく、
出逢いの輪っかになっていく…。

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