俺の彼女は、キスができない。
廊下に出た私の前には、ゆっくんが居る。
「ゆっくん……?」
私がそう言うと、ゆっくんが振り返った。
「お前、俺を独占、したいか?」
私はドキドキして、うつむいた。
「う……うん………。したい………」
ゆっくんは、近づいてきた。
っ!!
私は、ギュッと目を閉じた。
手は、手汗がひどい。
私の前で立ち止まった柚希は、スカートを握っていた私の手を掴み、歩き出した。
えっ?
どういうことなの?
ゆっくんの顔を覗くと、顔が赤い。
どうして、顔真っ赤なの?
理科室が見えたとき、ゆっくんが足を止めた。
止まった………。
どうして?
ふと横を見ると、トイレがある。
ま、まさか………。また………。
されるんじゃ!
私は、顔を赤めた。
「す……する気………?」
『する』という意味は、クビキスのこと。
クビキスとは、その名の通り、首にキスをすること。
私たちはキスができないため、クビキスをしているのだ。
ドキドキ。
心臓の音が止まらない。
「い…嫌か………?」
振り向かずに、ゆっくんが話す。
「嫌……じゃ…ない……けど」
心臓が、止まりそうだった。
恥ずかしい。
すると、柚希はまた私の手をひいて、トイレの個室に入った。
ゆっくんが鍵をかけた。
そして、こちらを振り返る。
ドキッ!!
ヒャー!!
恥ずかしいですー!!
二人きりなんて、無理ですー!!
そう思いながら、うつむいていると、ゆっくんが壁ドンをしてきた。
「ちょ………ひゃ……っ………」
いきなり、クビキスをされてしまった。
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