俺の彼女は、キスができない。
屋上の扉の前で、私は泣いていた。

「ううっ………ぐすっ……っ…」
屋上へと続く階段に響くのは、柚子の泣き声。
「ゆっ………くん……バカ…っ…ぐすっ………」
別れた。ついに、ゆっくんと別れた。

全てが、終わった。
これで、これで。
これで、良かった。
終わってよかった、はずなのに。
まだ心残りがある。
『ゆっくんが、好き』
まだ、その言葉が残ってる。
私の心の中に。
まだ、カケラという、カケラが。
「…ぐすっ………ゆっ……くん…っ…」
毎回毎回、ゆっくんという自分の声に、胸が高鳴ってしまう。
「まだ……ゆ…っ……くん…が………好き………」
また、胸が高鳴る。
君が好きで、たまらなくて。
君が、私の秘密を知らなかったら、良かったのに。

なのに、どうして君は。
私の秘密を知ろうと、するの?

「…ゆっ…く…ん……ひ…どい…っ……よ……ぐすっ…」

君への思いが、止まらない。
私の胸の中は、ゆっくんの存在で溢れていた。
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