俺の彼女は、キスができない。
翌日の昼休み。俺は、屋上にいた。
誰もいない。そのほうが、良かったのかもしれない。
「ゆっちゃん。って、俺に呼ぶ権利はないか。フラれたし」
ボーッと黄昏れる。
今、柚子は何をしてるんだろう。
笑顔でいるだろうか。悲しい顔はしていないだろうか。不安で、いっぱいになる。
でも、俺が心配してはいけない。だから、はやく俺の代わりになるヤツを、柚子の彼氏にしてくれよ。
「ゆっちゃん。もし、病気じゃなかったら。もし、病気のことを俺が知らなかったら。どうなっていたんだろうな。すげぇ気になるよ」
きっと、まだあの関係は続いてたはずだよな。
俺が悪いのか?それとも、柚子が悪いのか?
そんなの、分かんねーよ。
「ゆっちゃん。もし、俺で。こんな俺でっ。いいのなら。ぐすっ」
独り言を言う途中、涙が溢れた。
どんなに柚子が苦しいか。どんなに俺が苦しいか。
どっちが、酷いのか。
それも、分かんねーよ。
でもよ。それでもよ。
「もしも。少しだけ、希望があるなら。俺は、お前がいい」


お昼の屋上に響くのは、自分の嗚咽だった。
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