俺の彼女は、キスができない。
屋上に行って、頭を冷やそう。今日は、なんだか疲れた。
そう思い、屋上の階段を駆け上がる。
しかし、とある声が聞こえて、足を止めた。
─ゆっちゃん─
え?私を呼んでる?誰が?
─ゆっちゃん─
ゆっくん。まさか、キミが呼んでるわけないよねっ!
また階段を駆け上がり、屋上の扉の前までは来た。
聞き耳をたてた。すると。
─ゆっちゃん。もし、病気じゃなかったら。もし、病気のことを俺が知らなかったら。どうなっていたんだろうな。すげぇ気になるよ─
私は、抑えていた涙をもう抑えることができなかった。
扉の前で、泣き崩れた。
ぐすっ。ううっ。ゆっくん。
階段には、嗚咽が響く。
少しの間、泣いていると、またゆっくんの声が。
─もしも。少しだけ、希望があるなら。俺は、お前がいい─
私もだよ。
無理だって思ったなんて、まったくのウソだ。
本当は、私も希望があれば、ゆっくんと一緒がいい。
でも。でも。
キミは、私の秘密を知ってる。どうすればいいのか、分からない。

病気を選ぶか。ゆっくんを選ぶか。
天秤にかけても、つり合う。
こんな問題、一生どうすることもできない。
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