だから何ですか?Ⅲ
なのに亜豆とくれば相変わらずドライな目に俺を映しこむと、
「伊万里さん・・・」
「何だよ、」
「エキサイトすると熱あがりますよ?」
「っ・・・良くも悪くも熱上げさせてんのはお前だっつーの!」
何、俺一人勝手に熱くなってるみたいな言い方してんだ?
何でそんな他人事風だよ!と、感情は高ぶるのに・・・。
ああ、不調な自分が憎い。
そんな俺などさらりと見捨て?ドライな姿は鞄を持って扉の前へ。
「まぁ、何をそんなに悶えているかは知りませんが、『夢でも見た』んじゃないですか?」
「・・・・・」
・・・・・クソッ、
してやられた。
そう思わざるを得ない亜豆の言葉と表情と。
形も感触もいい唇がほんのりと優位な弧を描いて、それを視覚に収めればますます悔しさに焦れる。
「どんな極上な夢であろうと、望む物を前に手を伸ばした瞬間にパッと消えて無くなるものなんですよ。
しかも、醒めてしまえばどんなに嘆こうと手に入らないのが夢ってものでしょう?」
「っ・・・ムカつく」
何がムカつくって・・・、
こんな狡い女に必ずと言っていいほど負かされる自分に。
「くっそ・・・、好きなのにままならねぇ・・・」
関係が縮まり修復したかと高を括れば、あっさりと背を向けられ突き放される。
それにもどかしく思うのは亜豆の好きも見えているからで。
「伊万里さん、」
「っ・・・何だよ?」
呼ばれた声に今はただガキみたいに不貞腐れた反応しか返せない。
もう、張り合う気力も無いと布団に突っ伏していた俺に響されたのは。