だから何ですか?Ⅲ
そんな俺に亜豆が向ける顔は変わらない。
良くも悪くも無表情で、良くも悪くも感情が読めない。
それが楽であり、それが恐くもあり。
どっちつかずな感情に疲れ始めると同時。
カサカサと小さな音が横から響いたと思うと次の瞬間には唇に押し当てられる物がある。
そうしてふわりと鼻孔を擽るのは甘いチョコレートの匂い。
その瞬間には不思議と絆され『フッ』と小さく笑った口で受け入れ甘味に浸る。
口内で溶けきった頃合いに視線を動かせば柔らかく微笑む亜豆が吸っていた煙草の煙をフーッとワザと吹きかけて、
「馬鹿ですね、」
そんな一言。
そんな一言が只々大きい。
どんな物より自分に効果があって、『大丈夫か?』なんていう響きよりもどこまでも励まされる。
俺の欠け始めた穴に何を投与すべきかを熟知している亜豆の存在は俺の唯一の特効薬だと思った。
亜豆の存在に生かされ踏ん張って今目の前にある物に前向きに取り組んでいたつもりだった。
与えられる仕事に手を抜くわけでもない。
どこまでも自分の信じる力を活かして発揮して欲求不満は飲みこんで。