星空電車、恋電車
何でこんな時にこんな場所でこの人と出会うのかと余りの自分の間の悪さに呆れ樹先輩を見上げた私の顔はかなりひきつっていたと思う。

私の表情に樹先輩は気まずそうに口を開いた。

「・・・友達の結婚式だって聞いたけど、もう終わったの?」

「え、何でそれを」

私は驚いて目を見開き頬がひきつったもののすぐに思い出した。私に関するそんな情報源など一つしかない。

京平先輩だ。

ヤロウ、やっぱりきっちりシメときゃよかった。
いや、シメるべきだった。

お喋りな男め、むかつく。
後で一言文句を言ってやらねば。いや、ラインのスタンプを連打して攻撃してやろうか、合コンの邪魔をしてやろうか。

なぜ樹先輩に私の行動を教えるのか意味がわからない。
友人にその元カノの話なんてする?デリカシーにかけるでしょ。うん、後で絶対攻撃しよう。

無言で京平先輩への攻撃の意思を固めていると、
「もしかしてパーティーはこれから?」
と樹先輩にこちらを窺うような問いかけをされ、私は諦めてふるふると首を振った。

「いいえ、終わりました。もう帰るところです」

「そっか」
私の返事に樹先輩がホッとしたような顔をしている。

「だったらさ、よかったらこれから少し話ができないかな」

え・・・、予想外の樹先輩の言葉に息を呑んだ。
話ならこの間終わったはず。

私の返事は予期していたのだろう。
「この間聞いたから千夏の事情は理解したよ。でも、俺の話も聞いて欲しいんだ。千夏を傷つけたこともわかってる。全部わかってる。でもそれでも話したいことがある。時間つく・・・」

「あ、いっくんだぁ!」

樹先輩の言葉を遮る大きな声がした。
声がした改札のある方向を見ると、また・・・。

あの彼女が満面の笑みでこちらに向かって大きく手を振りながら歩いてくるのが目に入る。

なんだか前もこんな事あったよね。既視感がすごい。

あ、でも偶然じゃなくて、もしかして二人はここで待ち合わせだったのかも。
だったら邪魔者は私の方だ。

樹先輩も今からデートならいくら偶然見つけたからとはいえ私に声をかけるべきじゃなかったのに。
思わずはぁっと吐き捨てるようなため息が出てしまった。
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