星空電車、恋電車
「おおー、これがあの激レア塩辛かぁ」
京平先輩は早速袋の中からレア塩辛を取り出して拝むように眺めている。

「すげえー、よくこれ手に入ったな。もしかして俺のために早朝から並んでくれたとか?」

「んなはずないでしょ」

即座に否定すると、
「おい、言い方、言い方。俺一応先輩よ?」
とくちを尖らせる。

流石に先輩なら先輩らしくしたらどうなんだという言葉は飲み込んであげた。

「なぁ、これ千夏はもう食べたんだろ?どうだった?」

「私的にはアリですね。携帯もできるし斬新だと思います。インスタ映えも間違いなし」

「今、開けていいよな?な、俺がこれを開けてるところの動画撮ってくれよ」

わくわくと瞳を輝かして聞いてくる京平先輩が年齢よりもかなり幼く見えてくすりと笑みがこぼれてしまう。

はいはい撮影ですね、いいですよと差し出されたスマホを受け取り動画撮影を始めてからふと気が付いた。

「先輩、これ全身入れますか?顔は?手元だけ?」

「全部。でも塩辛中心な」

壊れ物でも扱うような手つき激レア塩辛の包装紙を開こうとしている。

京平先輩が次第にクリスマスプレゼントを開ける幼稚園児のように見えてくるのが可笑しくてクスクス笑いながら「了解でーす」と返事をした。

「おおーっ、これが本物か」

丁寧に包装された箱の中を一度覗き込んでからスマホのカメラに向けて箱の中を指差す。

私も調子に乗って箱の中にスマホカメラをズームすると、
京平先輩は「これが松浜屋の限定商品、塩辛グミ。あの激レア塩辛が今ここに」とその中の一粒をつまんで取り出して笑顔を見せた。

その小芝居に我慢が出来ず思わず吹き出してしまった。
いかんいかん、カメラがぶれる。

「おい、笑うなよ。いいだろ、ホントにこれ欲しかったんだよ。知ってるか?これ一粒ずつ形も違うし、この型は細部にまで拘って作られててだな」
このサバとマグロの違いが判るか?イカだってスルメイカと紋甲イカだけじゃなくてダイオウイカのもあるんだからなと熱く語り始めてしまった。

照れ隠しなのかムキになって説明してくる姿も可愛いんだけど。

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