星空電車、恋電車
青空の下、ホテルの屋上からは神戸の街と遠くに海が見える。
街の明かりが遠いここなら夜になれば星がきれいに見えるかもしれないとぼんやりと思った。

「座ろうか」樹先輩に促されて近くのベンチに並んで座る。

広い屋上庭園に人影はなくて近くの木々の揺れる音しか聞こえない。

そんな状況にドキドキしてくる。

それもそのはず、樹先輩はずいぶん大人っぽくなっていた。
高校生の時に感じた子供っぽさなんてものはもう跡形もない。大学で再会した時の戸惑うような苦し気な表情もない。

「1年半前、帰国が決まってやっと千夏に会えると思ったよ。なのに連絡したら京平から千夏はもう俺と会いたくないって言ってるって聞いてショックを受けた。千夏から直接聞こうと思って京平から千夏の連絡先を聞き出そうと思ったんだけどあいつに断られて」

私は京平先輩から樹先輩と連絡が取れなくなったと聞いていた。電話番号も何もかも変わってしまっていてわからないって。

「千夏はSNSを使ってないって聞いていたし、それであのサークルのつてを使って山下さんのことを探したんだけど、彼の連絡先が変わっていて結局見つからなかったんだ。なぜか誰も知らないって言って」

当時のことを思い出したのか樹先輩の顔が悲し気に歪んだ。
私の方は樹先輩が私と連絡を取るために山下さんを探してくれていたなんてことも知らなかった。

< 161 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop