星空電車、恋電車
*****

それからーーーー

「ごめん、ちー」
「今、ちょっと桜花がきついらしくて」
何度その言葉を聞いただろう。

彼女の病名を聞いてみたけれど、命にかかわるものではないと言うだけで詳しいことはわからない。
樹先輩と一緒に帰れる日はどんどん少なくなり、毎日ラインで連絡はするもののゆっくり会話することなどなかった。



ーーーそして、夏。


あの夏のインターハイのことはもう思い出したくない。ーーー

ウォーミングアップ中、右のふくらはぎの違和感を感じた。
今までに感じたことのない嫌な感じだった。

少しだけ不安になって大会に帯同していたトレーナーの姿を探すと、予選のスタートが直前に迫った短距離チームのケア中だとわかり、何も言わず控室に戻ることにして自分でマッサージをしてした。

少し揉んでみると、多少の違和感はあるものの張りは治まり問題ないように感じた。

このところハードな練習をしていたし。
いよいよ今日が本番なのだ。
私は頑張ろうと握りこぶしに力を入れた。

そして、予選がスタートした。


ーーーー結果はひどいものだった。
最後のハードルを飛び越える前にふくらはぎの違和感は激痛へと変わり私は転げ込むようにゴールをした。

もうタイムとか順位の話ではない。痛みで動けなくなり、医務室に運ばれた後会場に応援に来ていた両親の車で病院に直行することになってしまった。

私のインターハイは終わった。
樹先輩の応援をすることも走りを見ることも叶わなかった。


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