星空電車、恋電車
サークルに入るのに”顔の審査”って何だろう。くすっと笑ってしまう。
確かに山下さんはかなりのイケメンだったけど、私が知る限り、審査どころか誰でもいいからってみんな必死にサークル部員を勧誘していたけどね。

でも、まあ星空以外にそういう楽しみ方もアリかもしれない。
今の私にはナシだけど。

私もどこかに混ざらないと観賞できない。後々面倒くさいことにならないように山下さんのいないところっていうのが一番重要。
次に、空いているところがいい。
できれば、説明が分かりやすい人がいるところの方がいいけれど。

目が慣れてくると、場所によって望遠鏡を囲む人たちの輪の大きさが明らかに違うということがよくわかった。

そりゃあマイクを持った人が参加者に移動を進めるわけだ。中央の巨大な望遠鏡の周りが混みあうのはわかる。
あの大きな高そうな望遠鏡で夜空を見たらどれだけ見えるのだろう。

でも、それ以外にたくさんの女性が集まっているポイントがいくつかあった。

興味本位でそのうちの一つをチラッと覗くと、輪の中央にいたのはやはり山下さん。他に3人ほどのメンバーを従えて忙しそうに準備している。

おっと、やばいやばい。
山下さんに見つからないようにそっと場所を移動した。

その隣の大きな輪の中には山下さんと違ったタイプの凛々しいお顔のモデル体型の男性が周りの注目を集めていた。

周囲にいるお客であろう女の子たちからそのイケメン男性に注がれる熱い視線。
そしてイケメンと一緒に準備をしている女子メンバーには容赦なく冷たい視線が注がれているようにも見えるのはたぶん気のせいじゃない。

おお、こわっ。

こういうのはいらないんだけどな。触らぬ神に祟りなし。
私は星を見に来たのだ。
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