星空電車、恋電車
「大丈夫だよぅ。開始時間までまた余裕あるし、千夏ん家に行って着替えてから行けばいいよ」
ね、というユキに押しきられて今夜の合コンが決まってしまった。

もう合コンには行きたくないとさっき弱音を吐いたところだったのに。

「いろんな人と出会って、人を見る目を養うチャンスだと思えばいいんじゃない?」
いづみはそう言うけど。

今までの合コンが全くうまくいかなかったのは、ピンとくる人がいなかったからであって、樹先輩を忘れられないからじゃないーーと思っている。普段着から合コン仕様に着替えるためにアパートに戻ると言うとユキも付いてきて、私のヘアセットとメイクをしてくれた。

「うわっ。くるくる巻かれてるっ。あ、まつ毛も上がってるし長く見える~ユキすごい!神の手!」
鏡の向こうには見慣れない私の姿があった。
普段あまりしっかりメイクをしないから、ちょっと衝撃。

「何だか自分じゃないみたい」
ユキはえっへんと胸を張っている。「ま、千夏の素材を生かしたら、こんなもん序の口だから」

今まではうまくいかなかったけど、今回はいい出会いがあるかもしれない。
もう少し頑張ってみるのもいいかもしれない。
変身した自分に気を良くして合コン会場に向かった。

今回の会場はスポーツバーといわれるお店で、私たちが案内されたのはシュミレーションゴルフができる個室だった。

「すごーい」
「大きなスクリーンが付いてる」

スポーツバーなるところも来たことがないし、ましてやシュミレーションゴルフなんて初めて。
新鮮な気持ちで席に座ることができた。
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