星空電車、恋電車
「なのにユキはその辺のアイドルよりカッコいい山下さんにはいかないのよね?何で?」

「そういえば、私もそれ疑問だった。何で?」
いづみの言葉に私も同調した。

だって初対面の時はきらっきらに目を輝かせて山下さんのこと見てたし、今なんて私だけじゃなくてユキにもいづみにも山下さんは親切にしてくれている。

なんで?

私たちの問いにユキは笑い出した。

「やだー、そんなの決まってるでしょ。ここは現実世界だよ。
それに、山下さんって顔も性格もいいけど、あの人が彼氏だと浮気されないかとか他の人に優しくしないで欲しいとか自分じゃなくてもいいんじゃないかとかいろいろ考えちゃうもの。そんな面倒なヒトはごめんだよ。それにね、好きな人がいるような人にぶつかってる暇があったら他のフリーのイケメン探す時間に当てるってば」

ま、まあそうかもしれない。
ユキは山下さんが恵美さんに好意を持ってることにも気が付いている。なかなか鋭い観察眼を持っている。

不意にユキの手にしていたスマホがメッセージを受信を知らせる。すぐに内容を確認したユキが素早く返信している。

「あ、きた、きた。5対5の合コンの連絡っ。山際先輩が女子2名欠員で助けてくれだって。相手は上浦先輩のお友達のサークル仲間かぁ。じゃあ2才上だ。オッケーです、っと。これは条件通りだからいいでしょ、千夏」

は?
「ユキったら、勝手に決めないで。合コンがいつなのか、どんな人たちなのか教えてから返信してよ。私の都合ってものもあるんだし」
ぶつぶつと文句を言うと
「合コン今夜だって。急だけど、今夜ならちょうどいいでしょ?いづみはデートだし、もともと千夏は私と二人でご飯に行く約束してたんだし。いいよね」

「今夜なの?ちょっと急じゃない?私普段着だし、嫌かも」
眉間にシワがよってしまう。

浦上先輩と山際先輩はどちらもユキの高校の先輩だ。

偶然大学で再会したことで親しくしているらしい2歳上の細長くひょろっとした男子学生が浦上先輩で、何かとユキの合コンのセッティングをしてくれる。
山際先輩もよく合コンに参加するから私とも顔なじみってわけだけど。

今夜はユキと安い焼き鳥屋さんに行くつもりだったから、おしゃれなんてしていない。
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