星空電車、恋電車
「お待たせ」
その時、私服に着替えた恵美さんが私の隣の席にすべり込むように座ってきた。

「お疲れ様でした」
笑顔になった私とは対照的に山下さんの顔がわかりやすく曇った。
おっと、何だろうその表情。

「え、何?私来ちゃいけなかった?」
山下さんの顔を見て恵美さんの目が丸くなる。

「そんなことない」
山下さんは無表情になってお代わりで頼んだジンジャーエールを一気飲みすると立ち上がり会計伝票をつかんだ。

「さあ出るぞ」

えー、と言う恵美さんと私を無視してさっさとレジに向かってしまった。

「もー急いで終わらせたのに」
恵美さんが山下さんの背中に向かってツンっと唇を尖らせる。

私も残ったアサイーベリージュースを急いでごくごくと飲み干した。

うーん、もしかして。

急にご機嫌の悪くなった山下さん。
これって、もしかして恵美さんが自分ではなくて私の隣に座ったことでイラッとしたとか?
いや、まさか。この大人な山下さんが。でもそうかも。

恵美さんが私の瞳をのぞき込むようにじっと見てくる。
「で、話はできた?私にも聞かせてもらえるのかな?」

「あ、はい。それはもちろんです」

「よかったー。わざわざ私のいるお店に来て二人で話をして私には秘密って言われたらどうしようかと思ったー。急いできたのに山下には邪魔にされるしさぁ」

レジにいる山下さんに向かってフンっと鼻を鳴らした。

これもやきもち・・・かな。
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