星空電車、恋電車
「千夏が山下さんの大学にいるとわかれば自分で探します。無理に紹介してもらえなくても構いません」

「それでいいの?」

強気に出るとまた笑われる。

「千夏ちゃんが俺と同じ大学だと言ったかな。俺は自分の大学以外にも知り合いが多いんだよねーーーって君は知らないか」

俺が興味のない山下さんのプライベートなんか知るはずない。

「俺、他にもインカレサークル入ってるし、バイトも2つやってる。でも千夏ちゃんとどこで知り合ったかは今の君に教えるつもりはないよ。千夏ちゃんの許可があれば別だけどね」

自信に満ち溢れた言い方に内心ムッとしつつ、すぐに会うために今はこのオトコに頼るしかないのだということを思い知らされる。

「千夏に会わせて下さい」

俺は山下さんに頭を下げた。
ここで逃したらいつ千夏に会うことができるかわからない。

「倉本君、一つ、確認していい?」

山下さんはからかうような表情を引っ込めて真顔になった。

「君は何故千夏ちゃんがいなくなったのか知ってるかい?」

「・・・急に決まった親の転勤だと」

「そうじゃなくて、千夏ちゃんが引越しすることを君に直接告げなかった理由だよ」

「・・・」
俺は黙りこくってしまう。

「わかりません。だから彼女に会って聞きたいんです。なぜ黙っていなくなったのか」

そう、そこだ。どうして彼女は付き合ってる俺に対してもいきなりメールで別れを告げたのか。
そしてどうしてそれから一切の連絡を絶ったのか。
俺にはわからない。

「わかってないのか。やっぱりな」

山下さんの視線が冷たくなる。

「その辺のことを聞きたいんだろうけど、千夏ちゃんは今でも傷ついてる。だからあまり責めないでやって欲しい。そのあたりの事情を俺は彼女の口から聞いたけど彼女だけが悪いわけじゃないと思ったよ」

それは俺も悪いと言いたいんだろうか。
山下さんはこの話をどこまで知っているんだろう。それより千夏とどういう関係だろう。

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