姫は王となる。
カイトの目を真っ直ぐに見て、そう言った。
「…思ってたより、しっかりしてるじゃないか」
ふっと笑いながら言ったカイトの言葉に、剣を抜こうとしていた風も元の態勢に戻る。
緊迫した空気がふっと、和らいだ。
そして…
「花蘭女王様、数々の無礼な発言申し訳ございません」
カイトは頭を下げ、謝罪をした。
「しかし、私の先程の発言は、実際に北国から回ってきた噂でございます」
「北国からの噂だと…?」
「はい。先日、北国の使者が我が西国に来た時に、そう周りに言いふらしておりました。"現在の東国の王様は護衛長の言いなりで、護衛長がいなければ王様は何もできないと"」
「…っ」
噂は噂であって、真実ではない。
…と、言いたいとこだが…図星すぎる。
北国が言いふらしているなど、とことん私は馬鹿にされている。
「では…私にそのことを伝え、カイトはこの東国をどうしたいのだ?北国と同じように、西国も攻めてくるか?」
「王様っ」
今まで黙って聞いていた風が、"なんてことを"と言わんばかりに声を上げた。
しかし、今ここで風の意見を求めれば、北国の流した噂通りになってしまう。