姫は王となる。
「西国の護衛兵たちよ、突然呼び出してすまなかった。これから我らが向かうのは、北国との国境だ。そこに我が国の護衛兵たちがいる。北国との戦は秒読み段階だと聞いた…他国との揉め事に巻き込んでしまって申し訳ないが、力を貸してほしい」
西国の護衛兵数百人を前に、頭を下げた。
ザワザワ
西国の護衛兵たちが、ざわめき立つ。
ザワザワ
「花蘭女王様、頭を上げて下さい。もう、花蘭女王様は私の花嫁なんですから」
カイトが頭を上げるように促す。
その通りだ。私は、カイトとの縁談を承認した。
しかしー…
「私は、王族であれ護衛たちであれ、国民たちであれ…皆、大切な命だと思っている。命を守る優先順位などない。我が国の護衛兵たちにも伝えてある。だから、無傷では帰れないかもしれない…けど、必ず生きて帰ってくる。そのつもりで宜しく頼む」
下げていた頭を上げ、西国の護衛兵たちを見渡しながら言った。
「「「はい。花蘭女王様」」」
威勢のいい声で返事をした護衛兵たちに、安堵の息が漏れる。
「何もできない王様だと思っていたが、私の思い込みだったな」
「!」
隣にいるカイトがボソッと言った。
「北国の王に、花蘭女王様の力を見せてやりましょう」
カイトがニヤリと笑い、頭を下げた。
「あぁ。行こう」
北国との国境へー…