姫は王となる。
一瞬、何が起こったかわからなかった。
さっきまで風は、北国の王と戦っていた。
そして、北国の王に勝った。
そうだよね?
「…風」
力なく、その場に座った。
目の前には血だらけで、うつ伏せで倒れている風がいる。
「ねぇ…風…」
歓喜に満ちていた西国の護衛兵たちも、異変に気付き静かになった。
「風…」
何度も何度も呼んでも、返事は返ってこない。
地面に血が流れ落ち、赤く染まる。
「…生きて帰るって言ったじゃない」
あと一歩の距離を、這うように近付く。
「老婆が泣いてたんだよ?風のことを心配して…」
スカートが風の血で染まる。
「ねぇ…風…」
やっと風の顔の近くまでたどり着き、震える手で風の頬に触れた。
「ねぇ…風…」
頬を撫でても、風はピクリとも動かない。