お日様のとなり

「私、今のみあ好きだな」

「ほんと?」

「まぁ、みあが変わったのがあの安藤伊智のおかげかもしれないっていうのが癪だけどね」

おどけて笑いながら、苑実はお弁当を食べ始める。

それからは、テストの範囲が広すぎて嫌になるとか、夏休みは試合があるけど休みの日は遊んだりしようとか、そんなことを話しながら休み時間いっぱい苑実と過ごした。

午後の授業は移動教室で、苑実と話しながら渡り廊下を歩いていると、ふとグラウンドにジャージ姿のイチくんを見つけた。

イチくんのクラスはこれから体育らしい。

体育倉庫の影でしゃがみ込むイチくんの周りには人がいて、楽し気に話している様子を目で追った。

「何見てんの?」

隣を歩く苑実が首を傾げる。

私の視線の先を見て、「あぁ、安藤伊智か」と呟いた。

「話しかけに行かないの?」

「……どうして?」

「どうしてって、だから見てたんじゃないの?」

そういうわけじゃないけれど、イチくんを見つけた目がなかなか逸らせないのは何でだろう。

その時。

「イチー!」

後ろからきた橋本さんが私たちを追い越して、迷わずイチくんの傍まで走って近付いて行った。

声をかけられたイチくんは驚いたあとに大きく笑って、橋本さんはそんなイチくんの肩をふざけたようにパンチした。

2人の砕けたやり取りに、私の心臓は変なリズムを刻み始める。


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