極上御曹司に求愛されています

綾子や地元の友達が悪用するとは思わないが、どう広がって悪意にさらされるのかわからないのだ。
悠生の立場を考えればやめておいた方がいい。

「モデルやセレブなお嬢様が相手なら、悠生さんとつり合いが取れて悪い事ばかりじゃないけど、もしもなんのメリットもない平凡な私との写真がマスコミに流れでもしたら、悠生さんにとってマイナスにしかならない。綾子に送る写真がどうしても必要なら、事務所の弁護士さんにお願いして写真を撮らせてもらいます」
 
早口で焦る芹花に、悠生は苦笑した。

「どこが平凡だよ。自分の才能と努力でイラスト集を出すなんて、誰もができることじゃないだろ」
「……そんなこと、考えたこともなかった」
「カフェの黒板メニューが評判になったり、HPのイラストが人気で雑誌やテレビで取り上げられる芹花と比べれば、俺の方がつり合いが取れてないと思うけどな」
 
悠生の手が、芹花の短い髪をそっと梳いた。

「オンナとの写真程度で立場が悪くなるような仕事はしていないつもりだ。俺との写真が役立つならいくらでも使っていい。他のオトコとの写真なんて考えるなよ。たとえ弁護士先生でもな」
「……はい」
 
いい返事だなと笑った悠生を見上げた時、部屋の外からバタバタと騒がしい音がした。
芹花がハッと悠生から体を離したと同時にドアが開き、恵奈が入ってきた。

「このハイヒール、絶対に芹花さんに似合うから。是非履いてみて。アクセサリーもいくつかあるけど、それは木島さんと二人で選びたいわよね」
 
よっぽど自信があるのか、芹花の答えを待たず、恵奈は芹花の足元にひざまずきハイヒールを並べた。
今試着しているドレスと同じパープルのハイヒール。
柔らかい印象のラムスキンはドレスの質感ともマッチしていて、恵奈が薦めるのも頷ける。
足にしっかりフィットするクロスストラップも、ヒールの高さをカバーして歩きやすそうだ。
悠生に体を支えられながらゆっくりと足を通せば、ヒールの高さ分視線が上がり悠生との距離が縮まったような気がした。



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