極上御曹司に求愛されています

悠生の言葉に、芹花は口を閉じた。
どう答えていいのかわからない。
重い口調は悠生が抱え続けているプレッシャーなのかもしれないと気づく。
真剣な瞳を向けられて、簡単にイケメンや御曹司と口にしたことを後悔した。
しゅんとした芹花に気づいて、その場の雰囲気を変えるように、悠生は彼女の頬を優しく撫でた。

「もちろん今まで何もなかったわけじゃないけど、こうして抱きしめてキスするのも、久しぶりだ。イケメンの御曹司の恋愛は、意外と地味なんだ」
「でも、モデルとか大企業のお嬢様とか。ネットに出てたし。それも、両手で足りないくらいの女性の名前があったけど」
 
悠生の明るい口調に合わせて、芹花もからかってみた。
ネットでは、たしかにいくつかの悠生の恋愛について興味本位で書かれていた。
その中には、最近フランスのハイブランドの専属モデル契約をした有名モデルの竜崎楓の名前があった。

「モデル? ああ、それって芹花が修くんといちゃついてた頃の話だな」
 
含み笑いの悠生に、芹花はムッとする。
その瞬間、再びカシャリと音がした。
悠生がスマホで写真を撮ったのだ。
見れば唇を尖らせ悠生を睨んでいる芹花がアップで写っている。

「これは俺の待ち受けにする。で、さっき撮った二人の写真を友達に送っておけばいい。結婚式までに何枚か送れば友達も信じるだろう?」
「そんなことをして写真がマスコミにでも流れてしまったら、悠生さんが困ります」


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