極上御曹司に求愛されています

「え?」

悠生は、芹花の腰に手を回したまま体を起こした。
そして、不機嫌であることを隠そうとしない表情で、口を開いた。

「芹花を傷つけたうえに披露宴に呼ぶような元カレだろ? おまけに新婦は友達の恋人を平気で奪うようなオンナだ。そんな元カレと別れたおかげで芹花が極上の幸せを手に入れたってとことん教えないとだめだ。自分じゃないオトコが芹花を幸せにするってことを思い知らせてやれ」
「と言われても……」
 
冷静な悠生の言葉には納得できるが、芹花にとっては修を礼美に奪われたことは過去のことであり、当時味あわされた苦しみは、ゼロにはなっていないが憎んだり恨んだりする気持ちはもうなくなっている。

「修くんと礼美に、苦しんでもらいたいわけじゃないので、もう、大丈夫です。あの写真があれば地元の友達も」

ちゃんと披露宴に出席してくれるだろうと言葉を続けようとしたが、何が気に入らないのか、悠生の低い声が芹花の言葉を遮った。

「全然足りないだろう? あと何枚か写真を送って、確実に俺たちのことを認識させなきゃダメだ」
「そう、ですか……?」
「ああ。当然だろう?」
 
強い口調に気圧される。
写真を撮ることが悠生は面倒ではないのだろうかと芹花は首をかしげるが、これからも時間を作ってくれるのならば、正直嬉しい。

「とりあえず、二人で指輪を選ばなきゃな」
「え、指輪?」

驚き後ずさる芹花の体を抱きしめ直し、悠生は当然だとでもいうように頷いた。

「そんな……」

芹花は悠生の真意がまるでわからず、心底困ってしまった。


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