極上御曹司に求愛されています

「ゆ、ゆうき……」

芹花は、相変わらず間近に見る悠生の顔から視線を逸らした。
吐息すら感じられるほどの密な距離感に耐えられそうもない。
どうして悠生がここまで自分の近くにいるのだろう。
それも、意味ありげに指先を動かし、芹花の頬や首を刺激している。
芹花は自分を落ち着けるように浅い呼吸を繰り返すが、トクトクと早まる鼓動に比例して、体温も上がっていくようだ。

「あの、少し離れてください……」

どうにか気持ちを整え、おずおずと視線を上げたとき。
それまで首筋を撫でていた悠生の手が芹花の肩に回されたかと思うと、ぐっと力が入った。

「え、え?」

戸惑う芹花に構うことなく、悠生は芹花を抱き寄せると、二人の頬を合わせた。

「な、なに」

バタバタと慌てる芹花の肩をいっそう強い力で抱き寄せると、悠生は空いていた手で芹花のスマホをテーブルから取り上げた。



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