極上御曹司に求愛されています

そして、そばに置いていたスマホを手に取った。ホームボタンを軽く押せば、真っ黒な画面が一気に明るくなる。

「うっ……心臓に悪い」

画面には、頬を寄せ合っている芹花と悠生が写っている。
明るい笑顔の悠生と照れて顔を真っ赤にしている芹花。
「志乃だ」で悠生が自撮りした写真の中の一枚だ。

撮り終えたあと、悠生がスマホを勝手に操作し、二人の写真を待ち受け画面に設定したのだ。
芹花は画面の中の悠生をじっと見つめた。
数時間前に別れたばかりだというのに、今すぐ会いたくなるのはどういうことかと首を横に振る。
再びチョコレートに視線を戻せば、二人で夜景を楽しみながらグラスを合わせた時間を思い出す。
芹花がこの先二度と足を踏み入れることなどないだろう一流ホテルに、悠生はしっくりなじんでいた。
そして、自分のお財布では決して買うことのない高級チョコレート。
悠生は自分とは違う世界に身を置く人だと改めて実感して胸がきゅっと痛んだ。
スマホの中で笑う悠生なら、どれだけでも見つめられる。
それだけで満足しなきゃと、芹花は自分に言い聞かせた。

「本当に、格好いい。もてるだろうな……いろいろ慣れてたし」

雑誌の取材を受けることもあるほどの見た目の良さとセレブな生まれ。
女性が放っておくわけがない。
今も特別な人がいるのかもしれないと切なさを感じた時、スマホにメッセージが届いた。


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