『The story of……』
嘲る瞳は憎しみの色を帯び、わたしの顎をグッと掴みあげる。
嫌でも近付いた顔は、まるで人形のように冷たく綺麗だった。
「瑠戌みたいになんでも完璧にこなせるのが綺麗な生き方なの?」
「っ……」
「あぁやって悪役気取りで他人の為に自分の時間犠牲にして……恩着せがましんだよっ」
何があっても、どんなことがあっても、福士くんを貶すことだけは言って欲しくなかった。
福士くんの理解者である部分は、本当であって欲しかった。
「答えてよ。綺麗な生き方ってどんなの?」
「……離してっ」
壁に付いていたもう片方の手が、わたしの腕を握り締める。
顎も腕も掴まれて、身動きの取れないわたしを、いつもの笑顔を浮かべた十二谷くんが見下ろしていた。
「ろくな答えも出せないキミに、俺を蔑む資格なんて無いよ」
言い放った言葉の冷たさに、解放された体はゆっくりと床になだれた。
それに見向きもせずに去って行く後ろ姿は、涙でグチャグチャに歪んでいた。