『The story of……』

「知った風な口きくなよ。……だったら、おまえが代わりになってくれんの?」




わたしの言葉に腹を立てたのか、椅子から立ち上がった十二谷くんに力任せに腕を掴まれる。



でも、不思議と怖くなかった。



だって、



(十二谷くん……震えてるみたいだよ)



その姿はまるで、必死に縋る子どもみたいだったから。



「十二谷くんが救われるなら、わたしは良いよ」



わたしが代わりになって、十二谷くんの心が穏やかになるならそれで良い。



だから、



「十二谷くんが望むなら、代わりになるよ」



キッパリとわたしは答えた。

迷いなんか無い。

十二谷くんを助けたい、その気持ちだけだった。



「……バカだね、上総さん」



「へっ? ぅわぁっ!」



小さく笑ったかと思えば、次の瞬間には腕の中に引き寄せられていた。



未だに笑い続ける十二谷くんの腕の中で、状況が掴めず顔だけが赤面していくのがわかる。
< 211 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop