『The story of……』
「知った風な口きくなよ。……だったら、おまえが代わりになってくれんの?」
わたしの言葉に腹を立てたのか、椅子から立ち上がった十二谷くんに力任せに腕を掴まれる。
でも、不思議と怖くなかった。
だって、
(十二谷くん……震えてるみたいだよ)
その姿はまるで、必死に縋る子どもみたいだったから。
「十二谷くんが救われるなら、わたしは良いよ」
わたしが代わりになって、十二谷くんの心が穏やかになるならそれで良い。
だから、
「十二谷くんが望むなら、代わりになるよ」
キッパリとわたしは答えた。
迷いなんか無い。
十二谷くんを助けたい、その気持ちだけだった。
「……バカだね、上総さん」
「へっ? ぅわぁっ!」
小さく笑ったかと思えば、次の瞬間には腕の中に引き寄せられていた。
未だに笑い続ける十二谷くんの腕の中で、状況が掴めず顔だけが赤面していくのがわかる。