『The story of……』
「自他共に厳しい品行方正な親友の良き理解者で良いって思ってたよ。でもね?」
「…………」
「そのままだったら俺、瑠戌が居なきゃ何の価値も無い人間だって気付いたんだよ」
(だから、テスト問題を手に入れようとしたの? 福士くんに勝ちたかったの?)
切なげに瞳を伏せる十二谷くんに、自然と手が伸びてしまった。
伸ばした手はそっと十二谷くんの頭に触れ、紛れもなく黒いその髪を撫でる。
「……なんのつもり? 同情?」
「わかんない……けど」
そんなわたしを見上げる視線は鋭く、半ば睨み付けるようにこちらを見つめている。
「ただ、一人で考え過ぎて……パンクしてるみたいだから……」
「パンク?」
「……ホントは、あんなことしてまでテスト問題が欲しかったんじゃない。ホントは……見て欲しかったんだよ、十二谷くん自身を」
ホントの自分を受け入れてくれる相手を、探してたんだよね?
赤毛でも灰色の目でも関係なく、十二谷くんを見てくれる人を……。