5人の王子とお姫様!
それまで私を急かしていた力が緩んで、振り向いた聖は不自然なほどにこやかに微笑んでいた。
「僕が怒っているって、どうして思うのかな」
「……だって、聖……いつもと違う」
「それは答えじゃないよ、天音ちゃん」
ふ、と息をついた聖はまた唐突に笑みを引っ込めた。
背の高い聖に真顔で詰め寄られて、反射的に後ずさろうとするも一足遅く、気付けば顔を覗き込まれていた。
「無自覚なのは結構だけど、危機感がないのは考えものだね」
「な、何が……」
「やっぱり分かっていないね。
ねえ、君は女の子なんだよ」
聖の言いたいことがさっぱり分からなくて、戸惑いを乗せてその目を見返すことしかできない。
「さっきの騒ぎも、先生を呼びに行くか、それが無理なら周りに頼ればよかったんだ。たとえ乗る気がなくとも、女の子である君の頼みなら少なからず尊重されたはずだよ。
どうして突っ走って行ったの?」